旅から無事に帰還して、しばらくは腑抜け状態だった。異郷の地へ行くと、脳細胞が興奮し、それを沈めるのに時間がかかるようだ。
僕たち12名の兵達は、小型の観光バスを借りて、北へ北へと走った。車窓から見える風景は緑に覆われた山、小刻みに波打つ海。繰り返し、繰り返しその風景があらわれた。田んぼの真ん中にいると、ついぞ、海を見たことが無かった、やはり海はいい。海は広いな大きいな・・・。
入り江を往来する船を見ながら、ふと、誰かが言ったが、船は右側通行のようだ。知らなかった。僕たちは子どものようにはしゃいだ。しがらみから開放された大人のとる行動は、はしゃぎしかない。男って単細胞だぜ。
平日旅行のためか、休憩ポイントは透いていた。海を見ながらの昼食とあいなった。めいめいが。好きなものを注文する。僕は手ごろなところで、スパゲティー・ミートソースにした。中には、サイコロステーキ定食を食べるものもいた。結構なことで・・・・・。腹を下さなけりゃいいが。
目的地のある市街地へ着いた。ホテルに着く前に、有名な寺をニヶ所、訪れた。うっそうとした木立の中に寺はあった。いややあ、広いのなんの。こんなに広けりゃ掃除も大変だべ。誰かがつぶやいた。さもありなんと思う。
住職の妻らしい人が現れ、抹茶を振舞ってくれた。寺の歴史などを聞きながら、抹茶をすすった。おいしかった。時間がゆっくりと流れた。
夕方の五時を過ぎた。ホテルへのチェックインだ。山間部に長ひょろいホテルの全貌が見えた。道すがら、はたと思ったが、どこにも、遊興の施設が無い。ホテルの周りは山と田んぼばかりだ。普通、温泉地ならば歓楽街があるはずだが、ここには何も見当たらない。どうしたわけだ?。
どうも、この地は湯治客の集まる温泉地のようだ。知らなかった。それにしても、ホテル代が一人当たり二万円を越すとは、これいかに?。その懸念はいっぺんに吹き飛んだ。ホテルの中は別天地。何でも揃っていた。わざわざ、ホテルの外に探索に行く必要は無い。部屋も立派だった。障子を開けると、一面大きなガラス窓。外は広い庭園。緑がまぶしかった。夜になるとライトアップされ、それはそれは美しい。湯治にはもってこいか?。知らずメーテルに思いを馳せた。
宴会も豪華だった。料理は最高。湯治場とあって、騒ぐ客は、ほとんどいなかい。われわれも、品行を保つべく黙々と箸をすべらした。やがてアルコールが効き始めたかと思う頃、お開きだ。遊びに来たわけではない。あくまでも、研修旅行だ。そういうことにしておこう。
さあ、あとは自由時間。先輩諸氏としばらくの間、歌謡ショーを見た。その後、僕のお決まりコース・・・。マッサージをフロントへ注文。これが気持いいんだよなあーーーー。魔法の指が引き締まった僕の筋肉をほぐしていく。幾度となく経験した快感である。さてと、今日の揉み手は、どなかたかしら?と、期待に胸を膨らませていたところ、ドアのノックオンが聞こえた。
なななんんんと、登場したのは七十歳はすぎたかと思われるおばあちゃん。「揉まれる方はどちらさま?」ときた。友人達は知らぬ存ぜずで笑いをこらえている様子。「ぼ、ぼ、ぼくです」ということで、見事、魔法の指ならぬ、婆法の指の餌食となった僕でした。それでも、さすがに年期が入っていた。つぼはちゃんと押さえていたようだ。さすがの僕も延長は取りやめ、ワンラウンドのみのマッサージで終止符を打った。
いやはや。旅は予期せぬことが起きるものだ。寝るに限るということで、皆よりは早く船をこいだようだ。マッサージと早寝が功を奏し、翌朝は絶好調。朝湯にひたり、バイキングの朝食をとった。たらふくまんまで、元気一杯。
帰路につく前に買い物だ。
有名な窯元を紹介してもらい、そく出向いた。いやああ、陶芸はすばらしい。こんな土から見事な陶器が出来るなんて神業みたいだ。仲間の一人が、抹茶茶碗を手に取り、値を問うたところ、二十五万円。「えええっつ・・」と驚き、そっと、元の位置に返した。知り合いの紹介と言うこともあって、今日は一割引で売ってくれた。僕はマグカップ二個、八千円で買い、千円負けてくれた。いやああ、気に入ったものだから、嬉しいぜ。
とまああ、こんな調子だ。あとはガラス工房で、滴り落ちないという、醤油さしを二個、他には海産物などを市場で買った。めったにしない買い物なので、結構、面白い。瓶入りの酢らしき物を650円で先輩が買った。僕も買いたいと思って、500円へ、値引き交渉。それは駄目ということだったので、止めようとしたら、なんと600円なら良いという。「乗った」ということで、購入。側にいたいた先輩が、「俺、650円で買ったよ」と不満そうに言ったので、店の人も、仕方なく50円を返した。今日の格言。「駄目もともとでも、一応は言ってみるものだ」。
少なかった荷物が帰りには膨らんでしまった。帰りのバスの中では、皆が「おねんね」タイム。品行方正な僕だけが、目はギンギラギンと輝いていた。
夕方、無事に我が家へ帰還。冥土への旅以外は、帰るところがあるから幸せというものだ。小旅行だったが、あらためて、旅の面白さ、良さをかんじた二日間だった。
http://mirunmirun.hp.gaiax.com/
僕たち12名の兵達は、小型の観光バスを借りて、北へ北へと走った。車窓から見える風景は緑に覆われた山、小刻みに波打つ海。繰り返し、繰り返しその風景があらわれた。田んぼの真ん中にいると、ついぞ、海を見たことが無かった、やはり海はいい。海は広いな大きいな・・・。
入り江を往来する船を見ながら、ふと、誰かが言ったが、船は右側通行のようだ。知らなかった。僕たちは子どものようにはしゃいだ。しがらみから開放された大人のとる行動は、はしゃぎしかない。男って単細胞だぜ。
平日旅行のためか、休憩ポイントは透いていた。海を見ながらの昼食とあいなった。めいめいが。好きなものを注文する。僕は手ごろなところで、スパゲティー・ミートソースにした。中には、サイコロステーキ定食を食べるものもいた。結構なことで・・・・・。腹を下さなけりゃいいが。
目的地のある市街地へ着いた。ホテルに着く前に、有名な寺をニヶ所、訪れた。うっそうとした木立の中に寺はあった。いややあ、広いのなんの。こんなに広けりゃ掃除も大変だべ。誰かがつぶやいた。さもありなんと思う。
住職の妻らしい人が現れ、抹茶を振舞ってくれた。寺の歴史などを聞きながら、抹茶をすすった。おいしかった。時間がゆっくりと流れた。
夕方の五時を過ぎた。ホテルへのチェックインだ。山間部に長ひょろいホテルの全貌が見えた。道すがら、はたと思ったが、どこにも、遊興の施設が無い。ホテルの周りは山と田んぼばかりだ。普通、温泉地ならば歓楽街があるはずだが、ここには何も見当たらない。どうしたわけだ?。
どうも、この地は湯治客の集まる温泉地のようだ。知らなかった。それにしても、ホテル代が一人当たり二万円を越すとは、これいかに?。その懸念はいっぺんに吹き飛んだ。ホテルの中は別天地。何でも揃っていた。わざわざ、ホテルの外に探索に行く必要は無い。部屋も立派だった。障子を開けると、一面大きなガラス窓。外は広い庭園。緑がまぶしかった。夜になるとライトアップされ、それはそれは美しい。湯治にはもってこいか?。知らずメーテルに思いを馳せた。
宴会も豪華だった。料理は最高。湯治場とあって、騒ぐ客は、ほとんどいなかい。われわれも、品行を保つべく黙々と箸をすべらした。やがてアルコールが効き始めたかと思う頃、お開きだ。遊びに来たわけではない。あくまでも、研修旅行だ。そういうことにしておこう。
さあ、あとは自由時間。先輩諸氏としばらくの間、歌謡ショーを見た。その後、僕のお決まりコース・・・。マッサージをフロントへ注文。これが気持いいんだよなあーーーー。魔法の指が引き締まった僕の筋肉をほぐしていく。幾度となく経験した快感である。さてと、今日の揉み手は、どなかたかしら?と、期待に胸を膨らませていたところ、ドアのノックオンが聞こえた。
なななんんんと、登場したのは七十歳はすぎたかと思われるおばあちゃん。「揉まれる方はどちらさま?」ときた。友人達は知らぬ存ぜずで笑いをこらえている様子。「ぼ、ぼ、ぼくです」ということで、見事、魔法の指ならぬ、婆法の指の餌食となった僕でした。それでも、さすがに年期が入っていた。つぼはちゃんと押さえていたようだ。さすがの僕も延長は取りやめ、ワンラウンドのみのマッサージで終止符を打った。
いやはや。旅は予期せぬことが起きるものだ。寝るに限るということで、皆よりは早く船をこいだようだ。マッサージと早寝が功を奏し、翌朝は絶好調。朝湯にひたり、バイキングの朝食をとった。たらふくまんまで、元気一杯。
帰路につく前に買い物だ。
有名な窯元を紹介してもらい、そく出向いた。いやああ、陶芸はすばらしい。こんな土から見事な陶器が出来るなんて神業みたいだ。仲間の一人が、抹茶茶碗を手に取り、値を問うたところ、二十五万円。「えええっつ・・」と驚き、そっと、元の位置に返した。知り合いの紹介と言うこともあって、今日は一割引で売ってくれた。僕はマグカップ二個、八千円で買い、千円負けてくれた。いやああ、気に入ったものだから、嬉しいぜ。
とまああ、こんな調子だ。あとはガラス工房で、滴り落ちないという、醤油さしを二個、他には海産物などを市場で買った。めったにしない買い物なので、結構、面白い。瓶入りの酢らしき物を650円で先輩が買った。僕も買いたいと思って、500円へ、値引き交渉。それは駄目ということだったので、止めようとしたら、なんと600円なら良いという。「乗った」ということで、購入。側にいたいた先輩が、「俺、650円で買ったよ」と不満そうに言ったので、店の人も、仕方なく50円を返した。今日の格言。「駄目もともとでも、一応は言ってみるものだ」。
少なかった荷物が帰りには膨らんでしまった。帰りのバスの中では、皆が「おねんね」タイム。品行方正な僕だけが、目はギンギラギンと輝いていた。
夕方、無事に我が家へ帰還。冥土への旅以外は、帰るところがあるから幸せというものだ。小旅行だったが、あらためて、旅の面白さ、良さをかんじた二日間だった。
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